業界情報 シリーズ①トレンド ソーシャルコマース
インフルエンサーマーケティングとソーシャルコマース
近年SNSや動画サイトなどのソーシャルメディアと、ソーシャルメディア内で多数のフォロワーを持つユーザー=インフルエンサーの役割が拡大しています。(インフルエンサーマーケティングです。)

広告主はインフルエンサーを通してユーザーをターゲティングできる
インフルエンサーマーケティングの特徴は、ユーザーとのコミュニケーションをインフルエンサーが行うことにあります。コンテンツはユーザー目線に落とした「口コミ」としてインフルエンサーが作成し、フォロワーからのコメントなどにもインフルエンサーが対応する要領です。実は、わたしもサブで長浜ブルーベリー観光農園を準備しているのですが、いくつかのSNSマーケティング会社の営業の方から連絡をいただきます。今日はすこし勉強します。

インフルエンサーは、美容、スポーツ/ボディメイクなど分野別に分かれており、各分野に興味を持つユーザーがフォロワーとなっています。
したがって広告主である企業側は、間接的にユーザーをターゲティングすることができます。また、フォロワーはインフルエンサーの発信する情報に注目しているため、通常の広告よりもクリック率やコンバージョン率がよいとされます。
従来型マーケティングとインフルエンサーマーケティング

ソーシャルコマースは中国で発達
ソーシャルメディアでのインフルエンサーの投稿から、直接商品を購入するソーシャルコマースの形態は中国で発達しました。

Xingin Information Technologyが運営する小紅書はその代表例です。アプリ内で商品購入が可能なECサービスであると同時に、基本的なソーシャルメディア機能を持っています。ユーザーはテキスト、写真または動画の投稿、好きなアカウントのフォロー、または好きなコンテンツにコメントを残すことができます。
ソーシャルメディアを介した消費行動が浸透
インフルエンサーマーケティングやソーシャルコマースが拡大している背景には、ソーシャルメディアの影響力やコンテンツの拡大があります。
ソーシャルメディアにおいて人気コンテンツを発信するユーザーが、若年層を中心に多数のフォロワーを抱え、特定の分野や年代で強い影響力を持つようになっています。
またコンテンツの拡大もソーシャルコマースに寄与しています。2010年代にユーザー数が拡大したInstagramは、画像をベースコンテンツとしており、ショッピングへの親和性が高い。さらにTiktokなどの動画SNSでは商品の詳細な解説が可能となり、ユーザーの消費行動を直接喚起することができます。

消費者側も、若年層を中心にソーシャルメディアを介した消費活動に積極的である。GfKの調査では、米国の15-22歳の37%がソーシャルメディアで購入ボタンを使用すると回答しています。
インフルエンサー自身がブランドを立ち上げて事業を展開する事例もあり、ソーシャルメディアを介した消費やマーケティングは一般的なものとなっているようです。
米国 ソーシャルメディアを通じた消費行動

広告規制が強化される
インフルエンサーによるマーケティングは効果が高い一方、一般ユーザーにとって広告かどうかがわかりにくく、いわゆるステルスマーケティングとなってしまう恐れがあります。
特に健康関連商品などの分野では不当に効能を強調する投稿表示によって、健康被害が発生したケースがあります。そのため各国では表示方法などに規制を設け、コンテンツ型ソーシャルコマースやソーシャルメディアでの宣伝投稿に対して、「広告」を明記することをインフルエンサーに求めています。

米国のFTCは2017年に「エンドースメントガイドライン」の違反に対する取り組みを本格的にスタートしており、広告主やインフルエンサーに対して、罰則を科すケースが増加しています。
また、中国では、中国広告協会は2020年にライブコマースに関する行動規範を公表しており、広告主、インフルエンサーなどに対して、規制強化を進めています。
インフルエンサーマーケティングはエンゲージメント率が高い
インフルエンサーマーケティングは通常のデジタル広告よりもユーザーの反応がよいとされるようです。
インフルエンサーマーケティングでよく使用されるエンゲージメント率(いいね、クリック、シェアなどのユーザー反応率)で比較すると、通常の広告に対しインフルエンサーの場合約1.8倍、さらにコンバージョン率(訪問者等のうち目的の行動に至った率)では約2倍の水準です。そのため、広告コストはやや高いものの、ユーザーの獲得コストではインフルエンサーの方が大幅に低い結果となっています。

ただし、エンゲージメント率はインフルエンサーによって大きく異なり、また投稿内容によっても変わってきます。広告商品とインフルエンサー・フォロワーの合致度、投稿内容によっては想定した成果が出ないこともありえます。
Instagramの広告費用試算

インフルエンサーを使ったライブコマース市場も拡大見込み
インフルエンサーマーケティング(グローバル)市場をみると堅調に拡大しています。また、ライブ動画配信によって商品を販売するライブコマース市場は現在中国が主な市場となっていますが、今後は米国などでも拡大する見込みでのようです。Foresight Research によると2021年時点は110億ドル程度だが2023年には250億ドルに拡大するとの予測もあります。
グローバルのインフルエンサーマーケティング市場

中国企業はVC拡大
中国では、ソーシャルコマース内に決済機能がある場合が多い。小紅書も当初はレビュー掲載サイトでしたが、EC機能を付加してソーシャルコマースの代表企業となりました。
現在小紅書は日本と欧米などの国・地域に倉庫、輸送拠点を設け、物流網を整備しています。自社販売サービス以外に、第三者のブランド・小売業者へも物流サービスを開放しました。

また、同じくソーシャルコマースの蘑菇街は「美丽说」を買収した後、「美丽说」の傘下にあったネット決済サービスを自社のサービスに導入し、ユーザーに短期的なショッピングローンなどの決済・金融サービスを提供しています。
中国企業のバリューチェーン拡大

コンテンツ作成・配信に対する支援企業が登場
中国では、コンテンツ型ソーシャルコマースやインフルエンサーマーケティングの拡大や関連政策の変化により、関連する商流に変化が起きています。商品提供側、インフルエンサーやEC側の間にマーケティングコンテンツの内容作成・配信に対する支援企業が出現し、関連サービスの成熟により、バリューチェーン全体において、より緊密な連携が進んでいるようです。
例として、商品提供側とインフルエンサーの間にインフルエンサーのマネジメントをするMCN(Multi-channel Networks)機構が入り、インフルエンサーに対し、広告主との交渉、コンテンツ作成・配信支援などのサービスを提供し、両者のかけ橋となっています。
中国では外部環境の変化がプレイヤーの動向にも影響
中国のEC市場はこれまで2桁の高成長を続けてきましたが、景気減速懸念やコロナ禍での消費減退などで成長は鈍化しつつあるようです。またライブコマースおよびトップインフルエンサーに対する政府の取り締まりなど外部環境の変化とともに、プレイヤーの動向が分かれてきているようです。

主要プレイヤーの動向をみると、静止画投稿によるレビューコミュニティを核とする小紅書は広告収入が主ですが、ライブコマースやEC事業の拡大を進めてきました。特にEC売上拡大のため外部リンクの掲載を停止した結果、利用者・インフルエンサーの利便性が低下し離脱を招いているとの指摘があります。
2023年には広告枠で淘宝への外部リンクが可能になったと報じられており、難しい舵取りを迫られているようです。ファッションECでライブ配信も行う蘑菇街は売上の減少が続いています。
米国ではソーシャルメディアとEコマースが連携を進める
市場としてはまだ中国が中心であるものの、米国企業を中心にソーシャルメディアとEコマースが接続する動きが活発化しているようです。

Twitterは2022年6月から米国でショッピング機能の提供を開始、さらにShopifyとの連携することで、Twitter上で直接商品を販売できるようになるとも発表しています。YouTubeとShopifyも同7月に連携機能を発表、動画配信ページにShopifyの商品を表示しユーザーを誘導できます。
一方で、Metaは2017年頃からいち早くショッピング機能に取り組み、InstagramではShopifyとの連携でアプリ内で購入まで完結、WhatsAppではビジネス版にカタログ機能などを搭載しています。ただし近年は一部機能を縮小しており、Facebookのライブショッピング機能を2022年10月に停止、Instagramについては2023年にショッピングタブの削除が発表されました。