業界情報 シリーズ①トレンド3位 廃プラスティック
更新日:3月26日
サブスクリプションにインバウンドそれから電磁自動車に引き続き、最近のトレンド上位の業界情報を簡単に書いてみます。今回は、廃プラスチックです。なお、昨年更新版です。

一応、Speedaでチェックしましたが、廃プラスチックが本日(2023/3/26)もトレンド第3位です。
廃プラスチックは投棄、リサイクル率の低さが課題
世界の廃棄物のうち、プラスチック類は12%と食品類(44%)、紙(17%)に次いで多いです。また、自然分解が極めて遅いため環境に残りやすく、場合によっては環境汚染や動物に危害を与えることがあります。
個人的に、といいますか、ふつう気づきますが、エコバックで削減されるプラと、毎日だす家庭のプラごみを比べて、プラごみはまったく減っていない ですね。たぶん誰も解決に対して貢献できない。このままでは。

リサイクル率もガラスびんやアルミ缶などと比較すると低いようです。
ここではそうした廃プラスチックのリサイクルや投棄などの課題解決にかかる技術、サービスを最後に取り上げます。が、まずは最も影響をあたえているマクロのトリガー。
中国による廃プラスチック輸入規制

最大マクロ要因として、5年前から中国が輸入規制をしたことのようです。
従来先進国の多くは、そのリサイクル等を自国で完結するのではなく、国外に輸出することで対処してきました。
2000年頃から米国、ドイツ、日本などが輸出し、2016年までは世界の輸出量の半数を中国が処理していたのですが、グラフの通りプラスティック総生産は増加の一途ですが、中国への輸出額ストップにともない減少(赤線グラフ)していました、ただ2021年度増加に転じています。
富める国、貧しい国での排出量と処分方法の違い

アメリカを筆頭に、1人あたりGDPの高い先進国は、1人あたり排出量は増加、肺プラスティック処分方法は、「リサイクル」「埋立」「焼却」になり、アフリカなどGDPの低い国は、1人あたり排出量は低いことと、「投棄(オープンダンプ)」に依っている。
つまり、経済的に貧しい国では、「投棄」問題への対処が先決といえます。
SDGs、国際的な取組が進む

SDGsの流れは間違いなく各国の規制状況をみると、現在多いのはプラスチック製レジ袋と食器・容器類の規制です。
特にEUでは2018年に欧州プラスチック戦略を発表、2019年には使い捨てプラスチック製品の禁止指令を採択しました。さすがヨーロッパ。
加盟国では2年を目途に国内法の整備が必要とされ、ドイツやフランスを筆頭に規制が進んでいます。また英国でも同様の規制が導入されている。今後EUは包装材のリサイクルのほか、デポジットや再利用、詰め替えなどの制度整備を進める方針 を示し、規制の強化とともにこうした市場が拡大していくとみられます。
米国でもカリフォルニア州など一部では、プラスチック製のレジ袋や食器・容器などの規制が進んでいるようです。日本ではレジ袋規制のほか2022年4月に施行された「プラスチック資源循環促進法」では指定した12品目の使用削減やプラスチック製品のリサイクル促進が規定されているようです。
解決にはリサイクルと代替素材

生分解性のバイオプラスチックへの転換に加えて、行政支出に依存しない商業的回収システムの構築や、様々な材質が混在するプラスチック製品をセンサーで自動分別する技術、化学的に分解して原材料に戻すケミカルリサイクル技術などが挙げられます。

生分解性バイオプラスチックの包装向け潜在市場は現在の100倍以上
European Bioplasticsによると、2022年の生分解性バイオプラスチックの生産能力は全体で222万トン、包装用途で70万トンとなっています。
他方、2021年の世界のプラスチック生産量が3.9億トンであり、うち包装用途は3~4割を占めるとされることから、生産能力の100倍程度の潜在市場があるとみられます。
当然ながら価格面の問題はあるものの、規制強化などもあり市場は徐々に拡大するとみられ
ます。

プラスチックリサイクルは投下コストと販売価格が問題、相場上昇がビジネス化を後押し
リサイクルでは、採算性が最大の課題であるといわれます(直感的にもそうおもいます)。
Tinbergen Instituteによるとオランダでは、プラスチックの回収・処理コストを再生原料の販売価格が下回る状態で、採算がとれないとのことです。
現状はその差額を自治体が負担する形となっていますが、廃プラスチックの回収を加速させるには回収コストの低下と再生原料価格の引上げが課題です。
なお直近ではプラスチック原材料の上昇や供給不足から、リサイクル素材の需要が高まっています。
RecyclingMarkets.netによると、2019年7月時点で廃品回収による無色HDPE(高密度ポリエチレン)の価格は20セント/ポンドでしたが、2023年1月時点では62セント/ポンドとなっています。この価格を適用して試算すると、上記処理コストを上回ります。
価格は変動が激しいためこの価格を基準に考えることはできません(円安がいつまでも円安でないように。。)が、樹脂全体の相場上昇や再生原材料の品質向上によって価格が上昇すると、公的支援がなくてもリサイクルビジネスが成立しやすくなることがわかります。

プラスチック規制の強化により広範囲に影響
プラスチック規制の強化により、前述のように生分解性プラスチックなどの「代替素材」、廃棄物処理関連では「民間回収システム」「選別自動化技術」「ケミカルリサイクル技術」「開発途上国におけるごみ焼却発電建設・運営サービス」などの各種対応技術やサービスの市場が拡大するでしょう。
その他、樹脂原料を生産する化学・素材メーカー、商品のパッケージングに使用する食品や消費財メーカー、レジ袋や容器・食器類を使用する小売・外食企業など、広範な影響があるといえます。
なお、こうした技術やサービスは欧州企業によるものが多いようですが、ケミカルリサイクルに取り組む化学メーカーのEastman Chemical(USA)やAgilyx(USA)などの米国企業も存在しています。
本日はここまで、次回アップデート(予定)では、またすこし掘り下げます。