業界情報 シリーズ①トレンド4位 スマート物流
更新日:4月1日
3回目電気自動車でした。
今日のテーマは、「スマート物流」になります。前年の記事をアップデートします。
物流の効率化や情報活用が、事業の競争力を左右する

物流は、生産者と消費者をつなげる流通の一要素です。その業務には、生産地や工場、店舗間を運ぶ輸送業務、倉庫での荷役や保管などの倉庫業務、また最終顧客まで届ける配送業務(ラストワンマイル)があります。
EC拡大などを背景に物流への負荷は高まる一方です。倉庫では、物量及び種類が増加し、輸送・配送業務では指定された時間通りに届ける重要性とその時間指定(適時性)もより厳しくなっています。加えて物流チェーン全体で十分な人手が集まりにくい状況のようです。

物流自体が事業(商流)の競争力や成長の必須条件となっていて、これらの改善・解決に情報流をどう活用するかが問われています。

このようなニーズを背景に、輸送や倉庫業務などで効率化の取り組みや、情報を活用した新しい物流サービスが登場しつつあります。
情報の活用で、自動化やマッチングによる稼働改善などがはじまりつつある
物流業務の中でも倉庫業務は、多種多様なものを取り扱うため、単純作業であっても機械化が難しく労働集約的でした。
しかし、近年の認識技術などの向上で、機械化・自動化できる領域が増えているようです。

またピッキング業務は、棚から棚にピッカーが移動することに時間がかかっていたが、ピッカーではなく棚自体を自動的に動かすという逆転の発想が登場しています。
輸送業務では、何を運ぶか、どこからどこまで運ぶか、いつ運ぶか、その組み合わせは無限にありえます。
これまでもEDI(Electronic Data Interchange、決まった電子フォーマットでの受発注や出荷・納品、請求・支払いのやりとり)をはじめ情報化が進められてきました。
しかし投資コストが中小企業にとっては重く、データがリアルタイムに連携できないなどの課題もありました。

近年はスマートフォンが普及したことや、リアルタイム・低コストでデータがやりとりできるAPIへの置き換えが進んだことで、輸送の状況が把握しやすくなりました(Amazonはほんとすごいですよね)。
リアルタイムで把握できると、適時性が求められる荷物で遅延が発生しても、対応策を早く打てます。

一方で、適時性が求められないものは低コストで運びたい。また季節性がある商品は必要に応じて倉庫スペースを確保したい。こういった異なるニーズも、情報化によって状況が正確に把握できるようになり、それをマーケットとして成立させる「マッチングサービス」の登場で、物流資産の稼働率を改善する方向に動き始めているようです。
物量の増加に工夫で対処してきたが、負荷はますます増加
物流はグローバル経済の発展を支えてきました。貿易量の増加に対して、コンテナやパレットという規格と、クレーンやフォークリフトを組み合わせることで、荷役の生産性が圧倒的に上がり、それによって分業が進み、生産効率が上がり、消費者はより多くの物をより安価に買えるようになりました。

また前述のEDIの活用など情報化も進められ、特に大きい事業者はTMS(Transportation Management System、輸配管理システム)やWMS(Warehouse Management System、倉庫管理システム)を導入してきました。

このような工夫で物流が容易になり、時に国を超える分業が可能になり、ECを使って消費者の自宅まで直接届けることが日常になっています。
しかし、分業化が進む中で生産者と消費者の間はより長く、多段階になりながら、「物量」が増加しています。

輸送コストへのプレッシャーも増し、またすべてのサプライチェーンが連動するなかで適時性への要求は一層高まっています。

つまり、生産者と消費者を結び付ける物流や、物流機能を持つ専門商社などの中間流通に関わる事業者の負荷の増加になっています。
労働者保護・下請け保護に関連する規制や環境規制がスマート化の必然性を高める
物流業務は、人手による作業が依然多く、また大企業から中小企業、個人事業主まで多層的な構造となっています。
これらに対して各国で様々な規制があり、労働法や下請法といった法律・規制の遵守が求められます(個人事業主は大変です)。
物量が増加する一方で人材がひっ迫する中では、納期がある物流業務では適切な労働条件を守りにくくなる。そのなかで規制を順守するためにも「物流のスマート化」が求められている側面はあるでしょう。
また物流は輸送に伴って二酸化炭素を多く排出するため、環境規制の影響を特に受けます。
環境規制の強化に対して、稼働率の向上などによって、単位輸送あたりの環境コストを減らすことが求められます。併せて自動運転が関わる領域は、世界各国で議論されている自動運転の規制動向の影響を受けます。
物流コストはグローバルで数兆ドル、1%の改善も巨額となる
物流は社会の様々な財の流通に用いられています。また携わる企業は大企業だけでなく下請けとなる中小企業までと幅広いです。
国の公的統計などから試算されるマクロの物流コストは対GDPに対して先進国で一桁後半%、また中国では約15%となっています。なお、経済成長の過程で、付加価値が高い効率的な産業が伸び、対GDP比率は減少することが一般的です。
グローバル分業やEC普及率の上昇で「物量」が増加基調にあることに加え、常に価格プレッシャーがあることから、生産性を上げることは必須とされます。

米国・中国・日本においては最大の構成要素は輸送部門で、次に保管(倉庫)が続き、この2つの稼働率上昇や効率化、またそれによって物流効率を全体で改善することでサプライチェーン全体の在庫コストを下げることが、「物流のスマート化」が求められている経済的背景といえるでしょう。
物流に関する人材需給はタイト化の一途

スマート化の背景には、経済的な側面に加えて、物流を止めないための人材的側面もあるようです。
物量が増加するなか、世界的に物流関連の雇用は増加しており、人材需給がひっ迫しています。そのなかで人材を確保できない場合には、物流自体が止まるリスクが増します。
顕在化すればサプライチェーン全体に影響を及ぼす可能性があり、それは荷主からの信頼や今後のビジネスの継続性にも影響を及ぼすでしょう。
そのため、自動化・効率化によって、人材確保に伴うリスクを根本的に減らすことが求められます。

米国では物流従事者は約653万人(2000年は約436万人)、うちトラック物流が約160万人(同141万人)となっているます。
倉庫は約174万人が従事しているが、2000年には51万人ほどで、最も増加率が高いようです。
つまり物流関連業務でも倉庫への負荷が著しいことが伺えます。
またコロナ禍において、一時的に倉庫の雇用は急減しましたが、特に倉庫は全業種(Total Nonfarm)や物流の他業種と比較しても戻りが早く、雇用者数は過去20年で最も高い水準にあるようです。
ワクチン普及に伴う経済再開で小売の需要は力強く伸びておりこういった要因が倉庫の雇用増に繋がっている側面はあるでしょう。
日本でも、全産業平均値と比較して運輸・郵便の雇用DIは需給が逼迫していました。
しかしコロナ禍の影響でいずれも逼迫状況が大きく緩和されたが依然として不足感がある状況です。また2020年12月以降の数値は経済活動の再開に伴い、再び人手不足傾向が強まっています。

物流資産サイドは機械導入とAmazonの全域での攻勢、情報流は新規参入が多い
物流のスマート化は、ハード面では各種ロボットの導入が進んでいます(先日ファミレスでも配膳ロボットが!)。
また、物流業者に限らず、特にAmazonなど大手ECが物流の全領域を手掛けており、物量の拡大と併せて自社物流の比率を上げてきています。
物流に関わる情報流の分野は、資産を必要としないために相対的に新規参入しやすいといえます。
国際貨物フォワーダーは、元々物流資産を持たない事業形態ですが、オンラインで国際貨物を取り扱うデジタルフォワーダー業態が登場しています。
また物流状況をトラッキングできるサービスや、物流の各要素に特化したマッチング・マーケットプレイスが登場しています。
さらに、従来より物流事業を長く営んできた企業においてもDX(デジタルトランスフォーメーション)は進んでおり、例えばヤマトHDはデータドリブン経営へのシフトを掲げ、自社データを一元化するなどの取り組みを進めている
