財務DD(デューデリジェンス) シーズン1⑥ 個別論点 在庫

DDシーズン1と題して10回ほどの連載を考えている日替わりメニューですが、今日は在庫についてDDの視点から、さらに会計監査の視点から、さらには税務の視点から書いてみます。最後、経営者への一言を添えています。


なぜ在庫?


今日在庫を挙げた理由ですが、個別な内容が判りやすいかもしれないこと、思い出す案件もあること、在庫はBS上重要性の高い科目だということ です。




在庫とは?


在庫とは、棚卸資産のことです。会計科目では、材料、仕掛品、製品、商品となります。製造業、物販業を考えると「当社の製品」「当社の扱う商品」という業とした扱う目的物です。工場倉庫、営業所、(最近はAmazonなどの)物流倉庫に常備されるものも多いでしょう。


また会計上、BS(貸借対照表)資産のなかでは、流動資産の代表格です。




なぜ在庫が重要性が高いのか?


在庫は、もちろん会社の顔であり、そのものが当然大切です。他方、会計でも、その金額がいくらなのかを示すうえで重要なわけですが。



「粉飾の対象となりやすい」「評価が適切でないリスクがある」ため、重要です


専門的にいうと、実在性、評価の妥当性という監査要点(アサーション)のリスクが高いため重要です。


実在性:帳簿の在庫が、期末日時点で所有、存在している。

評価の妥当性:帳簿の在庫が、期末日時点で適切な評価額で評価されている。


以上のアサーションが保証されることは非常に重要なのです



時に正義の制裁を加えられる(左 正義=公正 右 粉飾=退場 のイメージです)



カネボウ事件?


もう15年以上前になります。わたしの人生(生活)にも影響を与えた事件でした。中央青山監査法人(PwC)で勤務していたのですが、監査法人解体に追いやられた事件でしたから。

その粉飾でも在庫不正は行われていました。そう、時に、老舗企業も倒産し、監査法人も共倒れるリスクがあるわけです。

ただ、今日はこちらを詳しく書くと脱線ですので、割愛します。

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DDの視点から




さて、DDの視点から、当然、実在性、評価の妥当性が正しいかを確かめます。ただし、DDは監査(上場監査、会社法監査)とことなり、1か月間、実際は2週間程度の期間で他の勘定科目とあわせて確認するわけですので、時間が限られた中で、落とせないポイントで見に行かねばなりません。



監査での必須手続


1.棚卸立会:決算棚卸に立会、現物をみにいく。


2.残高確認:期末日の帳簿残高を保有先に書面で確認をとる。


3.滞留評価検討:滞留在庫データを検討する


4.陳腐化検討: 売価(価値)の下落を検討する。


(棚卸立会のイメージです)



以上は監査では「必須」ですが、1.2.はDDでは「実施不可」です。なぜなら、期末日に棚卸に立ち会うタイミングでDDすることは、まずありませんし、外部へ書面確認する時間もないからです。


そこで、3.4.の検討は重要になります。






DDの現場から



ある大手商社の子会社をDDすることがありました。在庫が約5億円あり、純資産も5億円でした。他が正しいと仮定して、在庫が重要なシチュエーションでした。


そこで、3.4.とくに、3の調査をすすめたわけです。



案の定といいますか、2年ほど、動きの無い、つまり、在庫数に変動のないものがデータ分析からあぶりだされるわけです。なかには、3年以上動きの無いものも出てくるわけです。


どうですか、2年以上、動きの無い商品が、今後売れると思いますか?


問題は、そのような在庫の評価が、購入時の単価で評価されていることです



さらには、季節性、はやりすたりのあるものは、来年売れるの?という問題です。この切り口でも調査します。



結果として、在庫評価が5億円ないですわ という調査結果になったことは想像いただけるでしょう





税務会計



さて、上場会社でなければ、会計は税務会計です。上述のように、2年以上動きの無い在庫であろうが、税務会計で評価をさげることは、廃棄しない限りしません。税務署が認めないからですね。


ただ、考えてください、その在庫を含めて会社が売買される。売買(M&A)のあと、その在庫は売れない。そんな在庫をそのままの評価で会社が売買されるでしょうか?




といわけで、今日は 在庫 について 書きました。



経営者の視点から、2年に一度くらいは、自社の在庫評価を点検されることは、大切だと最後ひとことつけくわえます
















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