シーズン1最終回10回目、今日も前回に続き過去の案件から1つ(今回約9年前の案件について)ピックアップします。なお、個別会社名は出しませんし、いまとなっては報告書もありませんので記憶の断片からの書き落としです。

今回も3つほどポイントを挙げてから振返ってみます。
1.日本への留学生支援(事業内容)
2.買い手取締役・社長への報告
3.売却の動機(確認事項)
1.日本への留学生支援(事業内容)
9年ほど前の案件でした。対象会社は、中国を中心とするアジアの若者(中高生)が日本にきて日本の大学に入るための学習支援をする会社でした。当時すでに留学先として日本よりは、アメリカ、欧州を選択する若者が増えていましたが、日本の大学も(まだ?)人気があったため、結構積極的にアジアからの若者を受入て支援する「学校」でした。社長は中国人女性でした。

正確には覚えていないのですが、事業の性質上、物販でもなく、研究開発サービスでもありません、貸借対照表には、あまり調べるべき資産・負債はありませんでした。
つまりは、その後の事業展開のキーになるのは、受入留学生の確保の見込み、そのための現地エージェントとの情報でした。
2.取締役・社長への報告
財務DDは、当時の監査クライアントに対して実施していましたので、リスクとしては、現地エージェントとの取引に不明なものが無いかといった内容であったと思います。他方、財務DD報告の最中に「先生、いくらでしょう。」と買い手の社長・取締役から迫られた記憶でした。

さすがに、株価算定書は出せない(監査法人は監査クライアントに株価算定は実施できません)ので、自分でシュミレーションしてあったエクセルで「こんなイメージでしょうか」とお話しました。
なにしろ、貸借対照表に純資産が無い場合、キャッシュフロー(DCF法)でバリューを出すしかないですからね。
3.売却の動機
そうえいば、その時あまり議論はしていなかったのですが、売り手の女性社長は、財務DDの間、ご自身が手塩に育てた会社や、生徒への「愛」を熱心に語っていらっしゃいました。まだリタイアするお年でもなかったですし、次の事業の話も聞いていませんでした。

そのときは、買い手の社長・取締役もそのことを「先生、どうでしたか。」とお聞きにならなかったことでしたが、全体的なストーリーの整合性を確認すべく、売り手の動機を確認しておくことは、重要だったかなといま思いました(情報の非対称性から、意図せざるイシューが後で出ないとも限りませんからね。とくに、この件ではその後何かあったということではありませんでしたが)
では。

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