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「事業価値算定に関わるポイント」1.企業価値評価における事業価値、株式価値

執筆者の写真: Shuichi KobayashiShuichi Kobayashi

更新日:2024年3月24日


継続は力なり。「事業価値算定に関わるポイント」を改めて更新します(コラムや追記にて更新しています)。株価算定シリーズは全体として、以下の構成です。


1.企業価値評価における事業価値、株式価値

2.類似企業比較法、その計算例

3.DCF法および継続価値(ターミナルバリュー)

4.支配権プレミアム&流動性ディスカウントについて

5-1DCF法で使用する割引率(WACC)の計算例

5-2WACC計算におけるリスクフリーレートと負債コストの論点

5-3WACC計算におけるサイズリスクプレミアムの実務

5-4DCF法における期央主義

6.ベンチャー企業のバリュエーションにおける割引率



普段、株価算定結果しかご覧になられてない方には、改めて枠組みのご理解が頂ければ幸いです。


1.企業価値評価における事業価値、株式価値、それから企業価値 


それぞれ確認してみます。

なお、重要なことはこれらは「時価」をベースにした概念です。

なお「簿価」の概念では、貸借対照表の(修正前)純資産が株式価値をあらわしています。



事業価値

事業価値とはその名の通り、企業における事業(本業)の価値です。

BEV (Business Enterprise Value)と呼ばれることもあります。




株式価値

株式価値は企業価値から、債権者に返済しなければいけない有利子負債等の価値を控除したもので、株主に帰属する価値となります。

上場企業であれば、時価総額です。

EQV (Equity Value)と呼ばれることもあります。




企業価値

なお、企業価値は事業価値に、本業以外で保有する資産(非事業用資産と呼ばれます)の価値を加算したものです。


そして、企業価値は、債権者と株主に帰属する価値といえます。

EV (Enterprise Value)と呼ばれることもあります。




2.企業価値評価における事業価値、企業価値、株式価値の計算


3つの価値を具体的にどのように計算するのか、DCF法、類似企業比較法の別に見ていきます。


<DCF法における事業価値の計算>



DCF法の場合、事業価値は本業から生み出されるキャッシュフローの割引現在価値で計算します。



本業から生み出されるキャッシュフローは、一般的に営業利益-税金+償却費-設備投資±運転資本の増減で計算され、FCF(フリーキャッシュフロー)と呼ばれます。



FCFは将来の事業計画をベースとした税引き後利益と投資に基づいていますが、FCFが支配権を有する者(オーナー経営者、企業の意思決定者)により決定されている場合、DCF法による事業価値はいわゆるコントロールプレミアムを含むものと考えます。コントロールプレミアムはTOBの時に「上昇する株価」と考えられます。



・・・・・・・・・・・・振返りコラム・・・( ^ω^)・・・・・・・・・・


「売上も利益が出ているのに、なぜ株式価値が(もっと)でないんですか!」


とあるクライアントの株価算定にて、フリー・キャッシュ・フロー(事業計画)をDCF法で株価算定し試算結果を報告した際、この主張がなされたときがありました。たしかに、売上と利益がともに計画に沿って伸びている。株価がもっと伸びているはずだ。あるいみ至極あたりまえな感想でした。

しかし、その会社では追加投資が3年後、5年後、その後もかなりの金額で計画されていました。フリー・キャッシュ・フローは、追加投資も差し引いた残余であり、その残余の累計が株式価値として計算されるため、追加投資が多額であるばあい、株価は抑えられてしまいます。

株価とは、つまるところ配当還元法という手法も示すように、あるいは、減配すると株価が(一時的に)さがるように、儲けの分配度合いです。利益が出ていれば株価はあがるじゃないか。その通りなのですが、追加投資を超える残余しか分配には回せない。ですね。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


<類似企業比較法における事業価値の計算>




類似企業比較法では、事業価値を本業に関連する財務指標である、EBITDA(Earnings Before Interest Taxes Depreciation and Amortizationの略、一般的に営業利益+償却費)やEBITを使用して、事業価値をEBITDA x EBITDA倍率や、EBIT x EBIT倍率で計算します。




なお、類似会社比較法で使用する倍率、財務指標は上場会社の時価総額をベースにします。

上場会社の時価総額は一般投資家が売買できる株価です。そのため、支配権を有さない少数株主(マイノリティー)ベースの時価と考えます。



追記:売上高倍率法(PSR)もときには使用されます。(スタートアップの株式価値計算に使用されます)




企業価値の計算における非事業用資産


事業価値に非事業用資産を加算した金額を企業価値といいます。


非事業用資産は、その名の通り、本業には直接関係ない資産をいい、例えば以下のものが該当します。



余剰現預金、運用目的の有価証券、遊休資産、役員保険金、投資有価証券



売掛金、棚卸資産、有形固定資産などは事業用資産として、その価値はFCFを通じて事業価値に含まれるのに対して、非事業用資産は、非事業用資産の価値として、事業価値とは別に計算(加算)されます。



追記:預金残高の大きい会社、昔からの土地を持つ会社は、ときに事業価値よりも余剰預金や土地含み益のほうが重要性が高い場合もあります。


*************余剰現預金と必要資金***************


余剰現預金が最も頻繁にまた一般に加算される非事業性資産です。簡便にBSの現金及び預金の金額とする場合もありますが、通常は向こう一年間の間に使用が見込まれる金額つまり必要資金を除きます。DDにおいては、対象会社の必要資金を確かめます。求め方は月次経常収支の最大マイナス値を用いることがあります。


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有利子負債等

有利子負債は企業が負っている有利子負債であり借入金、社債などです。



株式価値の計算


事業価値(企業価値)から有利子負債を控除することで計算します。


あとは、仮に(子会社に)非支配株主持分がある場合には、非支配株主持分も企業価値から控除する必要があります。


ここまでをDCF法にて図解すると以下の通りです。


キャッシュフローと割引率(WACC)


最後、現在価値計算への割引率です。債権者+株主に帰属するキャッシュフローであるFCF(フリーキャッシュフロー)を、株主が要求する資本コストである自己資本コストと債権者が要求する負債コストの加重平均で割引きます。WACCと呼ばれます。なお、無借金経営で借入金が無い場合(あるいは、預金>借入金のような場合含む)は、自己資本コストが割引率となります。


なお、スタートアップ(特にアーリーステージ)の場合はWACCではなく、いわゆるベンチャーキャピタルレートが用いられるケースが多いです。


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