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財務DD(デューデリジェンス) シーズン1⑤ DD対応(社長の対応)


ではまたDDに戻ります。今日は、売り手サイドにたち「社長がどのような対応を迫られているか」をこれまでインタビュー側/調査側にまわった会計士の立場から書いてみましょう。あくまで、私的な想像も含みますのでご了承ください。


簡単なM&Aの前提




DDは買い手の意向表明(LOI)が受領されてから開始されます。LOI締結前には、事前に「依頼資料」を渡し、資料の準備をしてもらいます。さて、従業員50人~100人くらいの対象会社を想定しましょう。



3つの不安や困惑


1.「会社は無事継続してくれるだろうか」

2.「DDの準備対応はこんなに大変なのか」

3.「いくらでうれるだろうか」


DDの期間を通して、対象会社の社長の不安や困惑はおよそ、このようなポイントではないでしょうか。では、1.から



1.「会社は無事継続してくれるだろうか」


これは仲介者やFAのほうが直接実感するものでしょうから、DD対応が主たる役割の私自身は普段あまり考えて臨むことは少ないのですが、「これまで長年苦楽を共にしてきた従業員、取引先、仕入先が今後もその会社とともに無事継続した関係を続けて欲しい。」と思われることが多いように思います。その意味で、買い手にはこれまでの事業を上場会社の子会社となり信頼を維持し事業継続してほしいと希望されるケースが多いのかと思います。



2.「DDの準備対応はこんなに大変なのか」



わたしは「資料依頼リスト」「オフバランス質問書」「インタビュー質問」の3点でいつも調査先に財務DDの事前依頼をかけます。これは法務DDの弁護士も作成します。


「資料依頼リスト」は、会社の全般的な説明に必要な資料として、定款、登記簿、組織図、議事録、決算書、元帳、などに加え、商流、得意先、仕入先、工場

などの情報も要求します。それに加え、財務に関しては、決算書の勘定科目別の明細を要求します。この勘定科目別の明細が非常に多岐にわたります。特に損益関係はデータを準備してもらうため、業務データの準備まで含めて用意が必要になります。


さらに「オフバランス質問書」に関しては、40項目ほどの質問事項があります。切り口として特殊な契約の有無を確認しますが、その質問自体も理解に時間を要すると思います。


また「インタビュー質問」では、社歴、組織、製品商品、SWOT、などの基本事項に加え、財務全般事項の説明を求めます。これも、印象をよく見せるには事前に見やすいエビデンスベースの資料があると良いのですが、その準備が乏しいと、実力以下の説明しか出来なくなることがあるように思います。



秘匿性、社内協力者に頼れない



たとえば、決算書を作成する作業を考えますと、少なくとも2~3人の経理の方々が日々の業務で作成されているものです。これは、通常社長が行う作業ではありません。


しかし、M&AやDDの秘匿性から、クロージングまでには、社内にかん口令が引かれます。ですので、場合によっては、経理部長にも知らせないで準備をするケースがあります。


その前提を考えるだけでも、明細の準備を、社長一人が、日々の業務を前提に準備対応するのは、物理的精神的に非常に大変です。「準備はこんなに大変なのか」多くの場合に聞くフレーズです。



3.「いくらでうれるだろうか」


これは内なる声として聞かれます。


価格に関して、どのように決まるか一概には言えません。公正価値を前提に株価算定を行う専門家としても、価格形成は明瞭にと思いますが正直なかなかむずかしいです。


当然ながら、売り手は高く売りたい、買い手はなるべく低く買いたい。


例えば、売り手が20億円を希望しても、買い手は5億円を希望しているように、かなり価格に開きのあるケースもあります。ただ、これくらい開いていると、歩み寄れないで流れるケースもあります。「流れる」ことは、双方避けたいものです。


FAを介した場合は、価格が買い手に早い段かいで伝達されるので、そこが目安になりますし、そこに引っ張られクローズするケースも多いと思います。


その場合、すでに売り手はFAと相談していますから、まあ、良い訳です。ただ、FAは、成功報酬ですが、価格の1%からレーマンテーブル定額は取っていきます。


FAを立て無い場合、自らが相手と相対で交渉するケースもよくあります。このときに、価格をきり出せない、価格のバックデータがない、ひいては、価格を戦略的に考えてきていない、というケースがありえます。



まとめ(わたしから一言)


買い手も、売り手も、社長は考えねばならないことは多いです。そのために正確な情報収集も欠かせません。

今回は売り手の社長を前提に書きましたので、売り手の社長の立場なる方へのアドバイスをひとこと書いておきます。


売却までには3年から5年は準備しましょう。


その間に、自らの仕事はすべからく権限移譲をすませておくことです。そうすることで、必然的に社内のルールや業務フローも整然としてきます。


そして、事業計画は過去の実績をベースにたてていくことです。バラ色の計画を飲み込んでもらえるほど相手は甘くありません。


そうすることで、急に売却するよりも、2割3割以上は高く売ることが出来ます。ご興味あるかたはお聞きくださいね。



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