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執筆者の写真Shuichi Kobayashi

Purchase Price Allocation(PPA) ⑥会計基準(日本基準)と論点

今回は、PPAの会計基準と「PPAスケジュール」「会計仕訳」に関する論点2点です。

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PPAにおける無形資産価値評価は、そもそも特有の論点が多く、また会計基準や適用指針において具体的な算定方法や耐用年数の根拠等の定めもないことから、個々の事案に応じた適切な前提条件や将来予測に基づく、合理的な見積りが必要とされます。


そのため、無形資産評価を行う評価者には、十分な実務経験と財務会計・監査に関する高度な専門性が求められます。K.K.FASは、評価者であると同時に、監査法人の専門家レビューも経験してきており監査法人の監査に耐え得るレベルの専門家性を有しています。


なお、PPA(広義)は無形資産評価のみを意味しませんが、実務的に「PPA」というと無形資産評価を指すことが多いため、解説は無形資産評価についておこないます。


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PPAに関連する会計基準


企業会計基準第 21 号 企業結合に関する会計基準

企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針

(企業会計基準適用指針第10号)



企業結合に関する会計基準は適用指針を含めると約300頁に及びます。


また基準が適用されたのは2010年からですが、基準は米国基準(ASC 805,350)国際会計基準(IFRS 3,38)のコンバージョンで作成されました。


日本基準と米国基準・国際会計基準には「のれん償却有無」などの相違はありますが、基本翻訳で導入された基準であり、PPA実務(超過収益法・ロイヤリティー免除法などの評価アプローチなど)も海外実務を展開してきています。また、例えば、識別無形資産の網羅性検討はIFRS、ASCの例示を参照・使用することが一般的です。




論点1 暫定的な会計処理の確定(適用指針70項)


暫定的な会計処理の確定により取得原価の配分額を見直した場合には、企業結合日におけるのれん(又 は負ののれん)の額も取得原価が再配分されたものとして会計処理を行う。

なお、取得原価の配分は、企業結合日以後1年以内に行わなければならないとされている(企業結合会 計基準第28項)。このため、暫定的な会計処理の確定が、企業結合年度ではなく企業結合年度の翌年度に おいて行われた場合には、企業結合年度に当該確定が行われたかのように、会計処理を行う。 (略)


以上条文ままですが、PPAは1年以内には確定させましょうということになっています。


他方、M&Aの一般的なプロセスに照らしてPPAのスケジュールを解説します。

M&Aの一般的なプロセスはこちらを参照いただけます。


たとえば、×1年3月に秘密保持契約を結び、初期的な検討に3ヶ月程度かかり、基本合意が×1年6月とします。


基本合意後に、DDやバリュエーション(株価検討目的)が行実施され、SPAの締結が×1年11月でクロージングとします。


PPAは、クロージング後に実施され、評価対象とする資産・負債が多いほど費用・時間を要しますが、PPA完了は、×2年3月くらいまでかかることもあります。


基準に照らすと、×1年11月には暫定的な会計処理がなされる場合、×2年11月までには見直しが必要な場合、見直しすることになります。


見直しの仕訳は適用指針設例8に記載されていますが、クロージング日(×1年11月)のあるべき仕訳を作成し、差分の修正仕訳を事後的に切ることになります。




論点2 PPA無形資産計上時における税効果会計



PPAは、超過収益法やロイヤリティー免除法にて識別無形資産を算定します。識別される無形資産は将来加算一時差異になる場合、繰延税金負債を計上する必要があります。


設例


のれん 10億円 うち、顧客関連資産5億円 税率30% 


> 繰延税金負債 = 5億円×30% = 1.5億円


税効果仕訳


(借方)のれん 1.5億円 (貸方)繰延税金負債 1.5億円


つまり、10億円以外に、1.5億円償却負担が追加で生じる点には留意が必要です。




会計基準の論点は他にもありますが、以上2つは基礎的だとおもい今回紹介しました。












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