事業価値算定に関わるポイント 3.DCF法 と 継続価値(ターミナルバリュー)


およそ隔週に渡って、「事業価値算定に関わるポイント」を連載していきます。全体として、以下の構成で予定しています。今回3回目です。


1.企業価値評価における事業価値、株式価値 (2021/11/18 公開)<クリック

2.類似企業比較法について (2021/11/ 2 公開)<クリック

3.DCF法 と 継続価値(ターミナルバリュー) (本日公開)

4.支配権プレミアム&流動性ディスカウント

5-1DCF法と割引率(WACC)について

5-2WACC計算 リスクフリーレートと負債コストの論点

5-3WACC計算 サイズリスクプレミアム

5-4DCF法 期央主義

6.ベンチャー企業のバリュエーションにおける割引率


普段株価算定結果しかご覧になられてない方には、枠組みのご理解が頂ければ幸いです。また、これまで関与・作成した株価算定の仕様書ともいえます。すでにご覧になられた御方にはKKFAS報告書サンプルの解説にもなるかと思います。なお、報告書サンプルをご要望の方はひとこと「報告書サンプル」とお問合せください。


それでは、本日はDCF法とその核心部分ともいえる継続価値についてお伝えしていきましょう。最後に報告書サンプルで実際に計算された数字で見てみましょう。


なお、DCF法、事業価値については、1.企業価値評価における事業価値、株式価値をご一読ください。


さてDCF法では、通常「永久に」事業活動を行う企業・事業を前提として事業価値評価を行うため、事業計画期間以後の期間についても価値評価の対象とします。


そして、継続価値とは、DCF法における事業計画期間「以後の期間(継続期間)の価値の合計」のことを指します。

継続価値はTerminal Value(ターミナルバリュー/TV)とも呼びます。



DCF法では、継続価値は、価値の過半数(60%~80%程度)を占めることが通常です。


また、事業計画が当初赤字の場合事業価値の100%以上をTVが占めるケースもありえます


継続価値で事業価値が決まっていると言えなくもありません。なので、計算を間違えると事業価値計算を大きく歪めます。また、事業計画期間中の計算式とは算式が異なるため、間違いが発生しやすい項目です。


今回は、継続価値の計算方法を解説するとともに、計算も紹介していきたいと思います。



継続価値とその前提


通常DCF法では、企業は「永久に」事業を継続すると仮定(永久なんて・・・、という仮定ですが後で計算を見ると、「まあそうか」と合点いく点もあります)するため、企業が生み出す価値は永久の期間を想定して計算します。


「永久の期間」を想定してキャッシュフローを見積もるのですが、使用する事業計画は通常およそ3期から5期です。(なおM&Aにおいて時に事業計画が無いケースもあります。その場合、事業計画は過去の正常収益力を参照するケースもあります)



ですので、DCF法による価値は、3~5年間の事業計画期間から生み出される価値(上の図t+1 ~ t+3 )と、事業計画期間以後の期間である継続期間から生み出される価値(上の図、t+4 ~ t+7 のイメージですね)で計算されます。


事業計画期間の価値は事業計画値に基づいて計算するのに対して、継続期間は、キャッシュフローが一定の成長率(永久成長率と呼びます)で成長する(上図t+4以降定率成長のイメージ)。


あるいは永久成長率ゼロと仮定して計算します。日本では実務的に「一定すなわち永久成長率ゼロ」あるいはインフレ率の範囲内が多いように思います。


なお、成長率や割引率に一定幅を持たせる感応度分析で織込むケース(ゼロ成長を前提に+-1%、+-0.5%成長などを想定するケース)も実務的にあります。


継続価値は、継続期間(t+4以降)のキャッシュフローを「永久に計算した場合」の割引現在価値合計(ここが、ポイントですね)で計算します。



継続価値の計算式



継続価値は、一定の永久成長率での成長と、一定の割引率での割引計算で計算されるため、数学の無限等比級数の和の公式(ここも、ポイント)を用いて計算します。


無限等比級数の和の計算式は以下の通りです。




FCF=フリーキャッシュフロー(上記のt+4)

r=割引率

g=永久成長率



例えば、

FCF(t+3)=100百万円(1億円)

r=10%

g=0%


の場合の結果は1,000百万円(10億円)(100/10%)になりますが、継続期間10年目(10期=t+13)までのFCFを図解すると以下の通りです。

すいません、数字ちっさいですが、10期目(t+13)での累計は644.4百万円(6.4億円)です。


ちなみに30期(t+33)までだとこう。右下の吹き出しでも書きましたが、継続価値30期(t+33)でのFCF100百万円の割引後の価値は、5.1百万円になります。つまり、永久に継続すると前提を置いても、割引によってFCF100百万円の価値は限りなく小さくなっていきます。


因みに、30期(t+33)までの割引FCFの累計による継続価値は985.8百万円(9.8億円)ほぼ30年の継続前提でも1000百万円(10億円)に近いですよね。ですので、「30年継続する前提」であっても実際は同じようなものといえますよね。。これがミソですね。


(それ以降青色の金額を「永久に」計算して合計すると1,000になるということです。)



では最後に、実際の報告書サンプルでDCF法結果と継続価値を見てみます。

わたしの報告書サンプル(2021年版)でも紹介しています、なお、実際の算定計算ですが、対象会社名は当然の事、計算期間、基準日、単位などはマスクし、対象会社が判明しないように無毒化しています



FCF(t+6) : 51,843

r(WACC)=9.67%

g=0


継続価値 362,150

事業価値 533,625


継続価値÷事業価値=362,150÷533,625=67.9% 


このように、事業価値に占める継続価値は67.9%と大きな割合を占めることが判りますね。

この時は、事業計画がかなり強気で出されましたが、買い手サイドとしては過去の実績に波があるなど不確実要素を踏まえ、成長率はゼロと設定しました。


なお計画期間を見てもらうと、数字が同じですね、これも事業計画が強気すぎるため、t+1以降の計画値をt+5まで一定としています。このように計画期間の数値も実際計画値を採用しないケースもあります。


ではまた。



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