事業価値算定に関わるポイント 5-4 期央主義



DCF法の深堀論点です。なお今日で深堀、一旦最後です。DCF法は将来キャッシュ・フローを割引計算すると説明しました。



今回は、「ややマニアックなレベル」の話です。ただし、真面目に月次の事業計画を引いている人には「そうか!」という話だとおもいます。



さて、DCF法で割り引かれる際、事業計画の将来のキャッシュフローが「いつ発生するのか」を考えます。





用語の定義


月次で考えれば、1年目か2年目か?という年単位だけではなく、毎月の累計月で発生する前提で見積もる必要があります。


そこで、毎月は大変ですから、「1年の真ん中」で「年間のキャッシュフローが全額」発生するとみなす考え方を 期央主義 といいます。


季節変動が大きい会社は別ですが、期中を通じて平均的にキャッシュフローが発生すると思いますので、期央主義の考え方は理解可能ではないでしょうか。




ちなみに、シリーズ「事業価値算定のポイント」は、以下の章立てです。



1.企業価値評価における事業価値、株式価値 (2021/11/18 公開)<クリック

2.類似企業比較法について (2021/11/ 28 公開)<クリック

3.DCF法 と 継続価値(ターミナルバリュー) (2021/12/ 5 公開) <クリック

4.支配権プレミアム&流動性ディスカウント

4-1 支配権プレミアム          (2021/12/12 公開)<クリック

4-2 非流動性ディスカウント        (2021/12/19公開)<クリック

5-1DCF法と割引率(WACC)について    (2021/12/26公開)<クリック

5-2リスクフリーレート・負債コスト    (2022/ 1/ 2公開) <クリック

5-3WACC計算 サイズリスクプレミアム  (2022/1/ 9公開) <クリック

5-4DCF法 期央主義 (本日公開)

6.ベンチャー企業のバリュエーションにおける割引率




DCF法における割引期間の考え方


事業価値評価において、将来の(フリー)キャッシュフローが「いつ発生するか」の見積もりは、事業計画に依拠するため、いつ発生するかの見積もりも、事業計画に依存して


①月次

②四半期

③上期or下期

④年間


の大きく4パターンが考えられます。



ただし、DCF法は、④年間のキャッシュフローをベースに割引期間の計算をすることが一般的です



さて、何の前提条件もなく、1年目の年間のキャッシュフローは 基準日からどの時点で割引計算するか?


と聞かれた場合、どうですか?














多くの方は 1年間/1年後 の割引計算 [1÷(1+割引率)] をする と答えるのではないでしょうか?



しかし、どうでしょう?







なぜなら、1年間のキャッシュフローに対して上記の割引計算 [1÷(1+割引率)] を適用すると、


1年間のキャッシュフローの全てが「1年の最後の日に発生する」とみなすことになるためです


現実的には、1年間のキャッシュフローの全てが1年間の最後の日に発生するということは、あり得ない前提だと思います。如何ですか?




では、どう考えるかというと、1年間通じてキャッシュフローが大きなぶれなく平均的に発生するのであれば、 1年の真ん中 Central で通年のキャッシュフローが発生すると考えます。


そして、キャッシュフローが1期間の中央で発生するとみなすことから、期央主義と呼ばれています。


参考までに、期央主義に対して、1年間の最後にキャッシュフローが発生するという考え方を期末主義と呼びます。


1年間の最初にキャッシュフローが発生するという考え方を期首主義と呼びます。












DCF法は「1年ベース計算」ですが、精緻な計算ができる個所は精緻に計算するという思考で、割引期間については、期央主義を採用することが多いと思います。





期央主義を採用した場合の、期首日を基準日とする場合、


1年目の割引計算 / 現価係数は [1/(1+割引率)^0.5] / 0.82


2年目の割引計算 / 現価係数は [1/(1+割引率)^1.5] / 0.54 


となります。




^べき乗 、べき乗とは、累乗(※)を発展させたもので、指数を1以上の自然数以外も扱えるようにしたものです。数字(上記0.5、1.5)が割引期間です。


(※)累乗 aをn回掛け合わせたものをaのn乗と読み、aを底(基数)、aの右肩の小さい数字を指数とよびます。






^^:というわけです。ははは、べき乗並ぶと笑い顔(絵文字)








過去KKFASのDCF算定結果サンプル


過去のサンプル(案件が判らぬように一定無毒化しています)をお見せすると、期央主義による割引計算期間は以下の赤枠の箇所になります。





その他(EXITマルチプル、期中の算定基準日)




なお、ターミナルバリューをEXITマルチプルを前提に計算/試算する場合、「最後の年」はその年の最後に売却清算を前提にするので、最後の年は期末主義になります。


ちなみに、最近の事業価値算定書で、ある前提条件にて継続期間のないもの=有期事業計画のものを久しぶりに見ましたが、最終年度はまさに1.5でした。


それから、KKFAS結果サンプルのように、「基準日が期中」だと、すこしややこしいです。気になる方はまた個別にお話いたします。

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