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執筆者の写真Shuichi Kobayashi

事業価値算定に関わるポイント 5-4 期央主義

更新日:3月21日



(若干だけ更新しました。)DCF法の深堀論点(ちょっとマニアック)です。なお今日で深堀、一旦最後です。DCF法は将来キャッシュ・フローを割引計算すると説明しました。



改めて今回は、「ややマニアックなレベル」の話です。ただし、真面目に月次の事業計画を引いている人には「そうか!」という話だとおもいます。



さて、DCF法で割り引かれる際、事業計画の将来のキャッシュフローが「いつ発生するのか」を考えます。





用語の定義


月次で考えれば、1年目か2年目か?という年単位だけではなく、毎月の累計月で発生する前提で見積もる必要があります。


そこで、毎月は大変ですから、「1年の真ん中」で「年間のキャッシュフローが全額」発生するとみなす考え方を 期央主義 といいます。


季節変動が大きい会社は別ですが、期中を通じて平均的にキャッシュフローが発生すると思いますので、期央主義の考え方は理解可能ではないでしょうか。




ちなみに、シリーズ「事業価値算定のポイント」は、以下の章立てです。



4.支配権プレミアム&流動性ディスカウント

5-4DCF法 期央主義 (本日公開)

6.ベンチャー企業のバリュエーションにおける割引率




DCF法における割引期間の考え方


事業価値評価において、将来の(フリー)キャッシュフローが「いつ発生するか」の見積もりは、事業計画に依拠するため、いつ発生するかの見積もりも、事業計画に依存して


①月次

②四半期

③上期or下期

④年間


の大きく4つくらいパターンが考えられます。



ただし、DCF法は、④年間のキャッシュフローをベースに割引期間の計算をすることが一般的です



さて、何の前提条件もなく、1年目の年間のキャッシュフローは 基準日からどの時点で割引計算するか?


と聞かれた場合、どうですか?














多くの方は 1年間/1年後 の割引計算 [1÷(1+割引率)] をする と答えるのではないでしょうか?



しかし、どうでしょう?







なぜなら、1年間のキャッシュフローに対して上記の割引計算 [1÷(1+割引率)] を適用すると、


1年間のキャッシュフローの全てが「1年の最後の日に発生する」とみなすことになるためです


現実的には、1年間のキャッシュフローの全てが1年間の最後の日に発生するということは、あり得ない前提だと思います。如何ですか?




では、どう考えるかというと、1年間通じてキャッシュフローが大きなぶれなく平均的に発生するのであれば、 1年の真ん中 Central で通年のキャッシュフローが発生すると考えます。


そして、キャッシュフローが1期間の中央で発生するとみなすことから、期央主義と呼ばれています。


参考までに、期央主義に対して、1年間の最後にキャッシュフローが発生するという考え方を期末主義と呼びます。


1年間の最初にキャッシュフローが発生するという考え方を期首主義と呼びます。





DCF法は「1年ベース計算」ですが、精緻な計算ができる個所は精緻に計算するという思考で、割引期間については、期央主義を採用することが多いと思います。





期央主義を採用した場合の、期首日を基準日とする場合、


1年目の割引計算 / 現価係数 は [1/(1+割引率)^0.5] / 0.82


2年目の割引計算 / 現価係数 は [1/(1+割引率)^1.5] / 0.54 


となります。




^べき乗 、べき乗とは、累乗(※)を発展させたもので、指数1以上の自然数以外も扱えるようにしたものです。数字(上記0.5、1.5)が割引期間です。


(※)累乗 aをn回掛け合わせたものをaのn乗と読み、aを底(基数)、aの右肩の小さい数字を指数とよびます。






^^:というわけです。ははは、べき乗並ぶと笑い顔(絵文字)








数字による補足


期央主義による割引計算期間は以下のように計算されることがあります。例では、計画期間のn期が3か月を前提にしています。






その他(EXITマルチプル、期中の算定基準日)




なお、黄王主義は「1年を通じて平均的にキャッシュフローが発生する前提があてはまること」が、採用の前提です。年に一回の配当収入しかない場合の想定、売上が期末に集中する(あまり無いとおもいますが)場合には、期末主義、また、ターミナルバリューをEXITマルチプルを前提に計算/試算する場合、「最後の年」はその年の最後に売却清算を前提にするので、最後の年は期末主義になります。



それから、KKFAS結果サンプルのように、「基準日が期中」だと、すこしややこしいです。たとえば、12月決算の会社で、基準日が8月末だとしましょう。この場合、最初の決算日までの期間は4か月です。そのため、1年目の経過期間は2か月になります。そして2年目の経過期間は2+6の8か月、このような具合で月ずれ調整します。


では。



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