事業価値算定に関わるポイント 6 スタートアップ企業の割引率(シード・アーリー期)




本日は「事業価値算定に関わるポイント」の最終章6回です。この「事業価値算定に関わるポイント」シリーズでは、特にDCF法を中心に、わたしの経験アウトプットと最近のSpeedaの係数を補足に書いてきましたが、基本的にM&Aにおける株価算定を前提にしてきました。


今回は、ベンチャー企業/スタートアップ企業(どちらかというとシート・アーリーステージ)における株価算定とその割引率を中心に、簡単にですが書かせて頂きます。


スタートアップ企業のバリュエーションについては、事業計画や資本政策などのシリーズを予定していますので、またその際にも別途触れていきたいと思います。



ちなみに、シリーズ「事業価値算定のポイント」は、以下の章立てです。


1.企業価値評価における事業価値、株式価値 (2021/11/18 公開)<クリック

2.類似企業比較法について (2021/11/ 28 公開)<クリック

3.DCF法 と 継続価値(ターミナルバリュー) (2021/12/ 5 公開) <クリック

4.支配権プレミアム&流動性ディスカウント

4-1 支配権プレミアム          (2021/12/12 公開)<クリック

4-2 非流動性ディスカウント        (2021/12/19公開)<クリック

5-1DCF法と割引率(WACC)について    (2021/12/26公開)<クリック

5-2リスクフリーレート・負債コスト    (2022/ 1/ 2公開) <クリック

5-3WACC計算 サイズリスクプレミアム  (2022/1/ 9公開) <クリック

5-4DCF法 期央主義            (2022/1/16公開) <クリック

6.ベンチャー企業のバリュエーションにおける割引率 (本日公開)




評価対象としてのスタートアップ企業の事業計画の特徴



DCF法は企業の事業計画を一定の割引率で割引計算をする手法であるため、まずは、割り引く対象の事業計画がどのようなものなのかを分析する必要があります。



ベンチャー企業の事業計画には一般的に以下のような特徴があります。



事業計画が強気


事業計画作成の裏付けが希薄


事業計画の粒度が荒い


事業計画の信頼性が乏しい


言い換えると「事業計画のリスクが高い(振れ幅が大きい)」といえると思います。







したがって、(成熟した)上場企業、あるいは社歴の長い非上場企業と同じロジックで計算した割引率(WACC)をベンチャー企業に適用した場合、事業計画のリスクを「過小」に評価して価値を算出することになります。


別の側面で説明するなら、βなどの係数は、上場企業の類似会社のものです。つまり、基本的に上場(それに近い事業の安定性)を前提としているので、そもそも、シート・アーリーステージでは、βを用いたCAPMは理論的にも厳しいといえます。

なお、後述レイターステージでは、WACCを用いることがあります。



ベンチャー企業の事業計画に適用する割引率



ベンチャー企業の事業計画達成リスクを割引率に反映するにはどうしたらよいのでしょうか。


1つの手法として、ベンチャー企業への投資を行っているベンチャーキャピタルのIRR(内部収益率)を使用することが考えられます。


ベンチャーキャピタルのIRRはベンチャーキャピタルが投資先企業へ投資した際の利回りですので、ベンチャー企業へ投資する投資家の期待収益率の代理変数といえる思います。




上図は、スタートアップ企業の成長ステージと、キャッシュフロー、IRRの相関関係をおおまかに描いたものです。


IRRの水準は年々変化しますし、新型コロナウイルスの影響で近年の値はかなり変動していますが、設立後間もないシード、アーリーのステージでは、50%前後の割引率を用いるケースが多いと思います。



レイター以降、また、社歴の長い会社の事業計画の裏付けと、シード・アーリー期のそれを比べると、個人的には、50%は妥当な線だとおもいます。



50%の割引率の影響額の参考までに、事業価値算定に関わるポイント 3.DCF法 と 継続価値(ターミナルバリュー)で紹介した、100百万円の30年分のフリーキャッシュフローを割引率10%で割引現在価値とした結果と、割引率50%の結果、を以下に記載しておきます。





割引率10%・・・・985百万円


割引率50%・・・・244百万円


ですね。裏を返せば、事業が成長するほど株式価値は大きく成長します!







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